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中小企業キャッシュフローを改善することこそが「世話」になる

キャッシュフローを増やすことが貸出を増やし、金利を支払ってもらうことの大前提と考えればよい。そうすると、キャッシュフローが増えさえすれば、資金需要のない時代でも借入れをする動機が生まれるかもしれないしい適正プライシングのような金利の引上げを許容してくれるかもしれない。そしてキャッシュフローの改善が取引先の努力でもなく、また取引先の偶然の産物でもなく、取引のある地域金融機関の努力によるものであれば、取引先はどう思うだろうか。「世話になったので、一ついらないカネでも借りてやるか」とか、「世話になったので、ずっといわれてきた適正プライシングとやらに応じてやるか」という気になるのではないだろうか。ここで取引先にも評価され、かつ価格競争を免れうる新しい「世話」の定義が可能になる。

新しい「世話」とは取引先のキャッシュフローを増やすことと考えればよい。仕入・販売先情報をもとに売上高を増やしたり、売上原価を低減したりする効果のあるビジネス・マッチングはその手段の一つであるが、すべてではない。販管費となる人件費やいろいろな経費を削減するのもキャッシュフロー改善につながる。取引先に余剰人員が生じているときに、その人員に別の好条件な就職先をアレンジしたうえで、転職を促すというのも立派な世話といえる。どこの取引先もそれなりのシステム化を進めている今日であるが、リース使用のシステムをより安価で高品質の別のシステムのリースに切り替えることができれば、リース料は販管費の項目であり、取引先のキャッシュフローは増えることになるので、これも立派な世話である。

キャッシュフローを増やすということは、売上高を増やし、売上原価と販売管理費を減らすということにほかならない。一つだけ注意したいのが取引先中小企業の役員報酬である。勘定科目が販売管理費である役員報酬を減らせばキャッシュフローは増え、期中での役員報酬の減額は税務上も問題はない。しかし、マニュアル別冊に指摘されているとおり、代表者勘定は中小企業と一体である。役員報酬を減らして、余計な利息を払うというのは代表者の理解を得られないものであり、仮にできたとしても、「代表者を泣かせてカネを巻き上げた」とみられ、地域金融機関の横暴と受け取られる。実際に安易な事業再生などではこうした行動がみられ、再生先代表者の信頼を失っていくケースも多い。

「自分たちも給与カットされているんだから」と取引先に同じことをさせるのは、八つ当たりに等しい。またキャッシュフローが増えれば、それが地域金融機関の努力の結果であったとしても、当然のように代表者が役員報酬の増額を行いたくなるのが中小企業である。こうしたことをふまえると、キャッシュフローに役員報酬を加えた「中小企業キャッシュフロー」とでもいうべきものを、改善の対象とすべきであろう。そしてこのような新しい「世話」は現場の課題としてあげた顧客と地域金融機関によるゼロサムゲームの回避を可能にし、WIN・WIN関係の構築に寄与する。地域金融機関が「世話」をすることで中小企業キャッシュフローが増える。そしてその一部を受け取ることで、地域金融機関の利収が増える。

そもそも取引先はなんのために事業を営んでいるのかを考えてほしい。低利で資金調達をするより、大事な目的がある。中小企業キャッシュフローを増やすことである。これができれば、役員報酬をいくらでもとれるし、企業価値を高めることもできる。企業価値が高まれば、上場も視野に入り、創業者利益を得ることさえできる。上場企業は株価上昇から時価総額も増えていく。大小にかかわらず、すべての事業者共通のニーズである。したがって、このビジネスモデルは事業者のニーズに応え、かつ地域金融機関のニーズも満たす完璧なビジネスモデルといえるのではないだろうか。