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「地域金融機関として当然の世話」

地域金融機関の新しい「世話」は、定量的な成果に基づいて目標達成の成否が判断できるという特徴も有している。地域金融機関の努力が一〇〇万円なのか、一〇〇〇万円なのか、一億円なのか、損益計算書や試算表に数値で成果が表れる。そもそも数値で成果がみえないようなものは「世話」として認めてもらえない。世話をされる取引先にも中小企業キャッシュフローの変化は十分に理解できるものだ。価格競争に退路を求めないための条件がこの「世話」には備わっていることになる。ここがレートショッピングを避けるための最大のポイントである。ビジネス・マッチングも定量的な結果を出せる世話に変わりはない。この成果に徹底的にこだわったビジネス・マッチングを行えばよいのだ。

これまではビジネス・マッチングに一生懸命取り組むだけで、数値で表される成果へのこだわりが足りなかったから、レートショッピングされていたのではないだろうか。さらに目標の設定次第では、「地域金融機関として当然の世話」との誹りも免れる。年商五億円の中小企業にとって、一〇〇万円の中小企業キャッシュフロー改善は当然の世話かもしれない。しかし、地域金融機関の努力からもたらされた、年商の二割にも相当する一億円の改善だとしたら、当然の世話といえるだろうか。世話をする前にどれくらいまでの中小企業キャッシュフロー改善が当然の世話で、どこから以上が当然の世話でないのかを取引先に確認できる。

また価格競争の常連の競合金融機関との価格差を聞き、どこまで中小企業キャッシュフロー改善を行えば、その価格差が埋められるかも明らかになる。仮に、恒常的に毎年一億円くらいの資金需要がある取引先に対して、競合より条件を〇・五%近く高く提示しているがゆえに、いつも辛酸をなめているのであれば、五〇万円(一億円×〇・五%)をはるかに上回る中小企業キャッシュフロー改善を毎年行えばよいだけだ。これらは「行って、聞いて、話す」の段階で取引先と調整にあたるべきだ。なかには、「どんな金額であっても当然でなくなることはない」「求める中小企業キャッシュフロー改善は青天井だ」というひどい取引先もあるだろう。しかし、そういうことをいわれること自体、取引先からまったく信頼されていない、取引先にその後も信頼しようという意思がまったくないことを意味している。

過去になんらかのトラブルでもあったからか、信頼のなさにも程がある。世話の対価が回収できるかも心許ない。こうした取引先にかいがいしく世話をしてもいいことはない。このように「世話」にも数値目標が設定されるため、現場でも管理しやすい。ただし、それでも管理上の問題は尽きない。中小企業の決算は年一回であり、そのタイミングでしか確認できないからだ。このような問題を解消するためにも、「世話」をした先からは月次で試算表くらい受け取っておきたい。試算表の徴求は与信管理上も好ましい。世話をする取引先の顧問税理士とのコンタクトなどは必須であろう。中小企業キャッシュフローの改善はアプローチを始めてから効果が出るまで時間がかかる。また、効果の持続性もまちまちである。システムリース料の削減であれば一度成功すると何年も中小企業キャッシュフロー改善に効果があるが、いつまで効果が続くかわからないものもある。

前者の場合、世話のプロセスを評価したい気持ちはわかるし、後者の場合、永遠に評価し続けたい気持ちもわかる。もっとも、価値ある「世話」だからこそ、正確に評価したいものである。現場で独自にルールを決めるということも一つの方法だが、すべては世話の対価がいつ回収できるか、またいつまで回収できるかであり、世話をやいた取引先の考え方に左右される。繰り返し世話をし、世話をしていることを印象づけなければ、地域金融機関の努力はすぐに忘れられてしまう可能性も排除できない。よって、プロセスよりは結果を基準に評価し、確実に決算に反映される分のみを評価するという保守的な評価方法が好ましいだろう。プロセスだけでは顧客は満足しないものだ。次から次へと異なる世話をやき続けて、結果を出していければよいのだ。それが地域金融機関として地元取引先から期待されていることだと思う。