記事一覧

消費者金融業界は価格競争とは無縁の世界

地域金融機関が「世話」をすることで中小企業キャッシュフローが増え、その一部を受け取ることで地域金融機関の利収が増えると示した。「世話の対価」は増えた中小企業キャッシュフローの一部ということだ。顧客の取り分と地域金融機関の取り分は地域金融機関の内部ルールで取り決めてもよいし、顧客ごとに交渉して決めてもよい。ただし、世話の対価を回収するとの観点から、顧客の取り分か多くならないようにする心がけが必要である。世話の対価をきちんと回収することまでが地域密着型金融の本質に含まれている。少なくない地域へのコミットメントコストが事業運営に伴う地域金融機関である。そこをカバーする収入が必要だということを忘れてはならない。「いい人の集団」という地域金融機関の特徴をふまえると、顧客の取り分か多くなりがちだろう。もう少しがめつさが欲しいものだ。

地域金融機関の取り分か少ないと、世話をして、結果を出すことの責任も小さくなり、世話の質が低下することにもなりかねない。世話をすることはボランティアではなく、ビジネスモデルの一部なのである。質が悪くても問題であり、質が悪いからといって安売りすればよいというものでもない。回収する対価は実額でとらえよう。率(金利)に惑わされるな では、どのような手段で回収するか。現場の業績評価に最も効果のある形で回収することが望ましい。手数料で役務収益として回収するよりは、地域金融機関が預金超過でその運用に四苦八苦している状態をかんがみ、資金利益など融資関連の収益として回収したほうがよいだろう。後者のほうが、どの地域金融機関でも業績評価上の配点は高いはずだ。

なかでも、大手行がなし崩し的に手を緩めつつある適正プライシングは、地域密着型金融機能強化の要請事項として、地域金融機関はなおも金融庁から求められている。世話の回収としての適正プライシング推進が避けられないだろう。適正プライシングは非正常先のようなところを対象とした推進にとどまっているのが実態で、価格競争に引き込まれていくなかで、正常先に対しては完全に後手に回ってしまった。後手に回るどころか、そもそも正常先に対しては適正プライシングを端からあきらめている地域金融機関も少なくない。また、非正常先ばかりに対して適正プライシングを推進することについて、弱い者いじめのような感覚がないわけでもなく、つらい気持ちで推進していた地域金融機関の行職員も多いのではないだろうか。いままでの常識では、正常先の既存貸出で一%を超えるような金利引上げ交渉はむずかしい。

しかし、仮にその取引先への貸出残高が五〇〇〇万円であれば、二%の金利引上げはこの取引先にとって、年間一〇〇万円の営業外費用のコスト増になる。中小企業キャッシュフローを二〇〇万円改善し、それを仮に取引先と折半するとすれば、二%の金利引上げさえも特にむずかしいことではなくなるのではないだろうか。価格競争のときには、競合相手との貸出金利差が数ベーシスポイント(ベーシスポイント:一%の一〇〇分の一)だっただけで涙をのむことがあるが、顧客のコスト負担を実額でとらえると些細なものであることがよくわかる。価格競争にのめり込んでいったため、こうした事実認識はどこかに忘れ去られがちであった。世話をして、世話の対価を回収することではじめて気づくことかもしれない。消費者金融業界は価格競争とは無縁の世界であるため、この事実をうまく活用して営業をしている。年利ではなく、月利での表示は伝統的であるが、「一ヵ月で一〇万円借りても利息はわずか一〇〇〇円(年率約一二%)」といったような見せ方を心がけている。

「わずかコーヒー三杯分」といった言葉が追加されることもある。一二%という年利は高いが、消費者にそれを受け入れてもらうために、心理戦に臨み、別の見せ方をしているのである。価格競争をしながら「○・○五%の金利差は社長のゴルフ三回分」というのも結構だが、地域金融機関が価格競争に退路を求めないのであれば、内部で同じように考えるほうがよい。「中小企業キャッシュフローの改善は一社当りわずか二〇〇万円で十分だ。それなら当店の行職員みんなができるだろう」といった具合だ。そして「当店所管の一〇〇の取引先でこれを実施すれば、新規貸出がまったく実行できなくても、一億円(一〇〇万円(二〇〇万円の半分)×一〇〇先)の資金利益改善も夢ではないのだ」と考えよう。世話をすることに少しはやる気が出てくるのではないだろうか。