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回収された対価こそが地域貢献の成果物である

さらに地域貢献について世話の対価の回収は大きな意味を有する。地域貢献は「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」において、「地域の利用者が市場規律のもとに評価するものとされ、地域金融機関の財務上の影響についても管理会計などで測定できるものとすべき」との見方が示された。市場規律とは株主による規律づけを意味する。株主は経営資源の浪費を許さないものだ。したがって、地域貢献のメリットを受ける利用者には、経営資源の浪費にならない範囲で、地域金融機関は地域貢献を提供していかなければならない。さらには地域貢献が地域金融機関の財務面に好影響を与えることが望ましい。

取引先の中小企業キャッシュフローを改善させることは、まぎれもなく地域貢献である。地域経済を活性化させることになる。そして地域貢献の度合いが定量的に測定されることになる。その地域貢献の成果物を共有することが、世話の対価の回収で実現する。「当期の地域貢献は一〇億円で、その地域貢献の当行の財務上の影響は三億円でした」というような説明が可能になるのだ。こうした説明が可能な地域貢献は、ほかに見当たらない。地域貢献の多くはそのコストの測定が可能であるが、そのコストが生み出す効果をほとんど正確に把握できないものだ。「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」のなかで「管理会計で地域貢献の効果を把握せよ」といわれているが、いざ始めたらむずかしいはずだ。

利用者に寄りすぎた経営資源浪費型の地域貢献は株主の機嫌を損ね、株主に寄りすぎたしみったれた地域貢献では利用者は満足しない。伝統的な資金仲介業務同様、地域貢献もゼロサムゲームのようにとらえられがちである。ところが、世話をして、世話の対価を回収するというビジネスモデルは、取引先とのWIN・WINの関係を構築するため、地域に対してもWIN・WINの関係構築が可能になり、ゼロサムゲームを回避できる。利用者も株主も満足するのである。「当行の地域貢献は取引先の中小企業キャッシュフローを改善することです」と宣言しさえすれば、管理会計により財務上の影響を測定するまでもなく、世話の対価の回収分を電卓で集計するだけで事足りる。「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」上も高評価を得られることは間違いない。さらにこうした地域貢献の定義は、実体の伴わない地域密着の結果、顧客とのあいだにできた溝の修復に寄与するだろう。

資金需要の少ない時代に「地域貢献は安定的な資金供給です」という地域金融機関は、非正常先の取引先くらいからしか喜ばれない。しかも非正常先の望むような低利・無担保・無保証といった条件での取引は現実問題としてむずかしいので、その喜びも半減してしまう。しかしながら、取引先が事業を営むそもそもの理由である儲けること、すなわち中小企業キャッシュフローを改善することに協力を惜しまない地域金融機関であれば、取引しない理由はない。資金需要はなくても、恒常的にコンタクトしておきたい地域金融機関になることは間違いない。「ウチの地域貢献は企業メセナでもなく、安定的な資金供給でもありません。取引先のお客様に儲かっていただくことです」と地域金融機関が地域に対して宣言できれば、営業はずいぶん楽になるのではないか。